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5/13、矢島舞依ワンマンLIVE「Darkness Sabbat」@渋谷club asiaに行ってきた。外はあいにくの雨模様であったが、sab bat=魔女の集会なので好天に恵まれる必要もない。
チケットは3/24の渋谷cycloneで購入済み。整理番号順に入場である。当日特典としてLIVEタイトルと日付が印刷された金色のピックが配布される。これはもったいなくて使うわけにはいかない。
「当日の映像を購入できる」という事前の告知があり、こういうことに疎い私はよく意味が分からなかったのだが、数量限定とのこと なので入場直後に購入。カードに印刷されたQRコードから、後日 編集された映像をダウンロードできる仕組みだそうだが、最近は一 般的なのだろうか。購入と引き換えに私物へのサインか2SHOT 写真が撮れる当日限定の特典カードが渡された。

OPENからSTARTまで約1時間、ほとんどNIGHTWISHの曲が流されていた。

今回のLIVEで特筆すべきだったのは”Incest Taboo”である。
LIVE中盤で矢島さんが一度ステージから退出。たしか昨年12 月のワンマンでも途中で幕が下りて休憩のような時間があったので、今回もそうかと思ったが、映像が流され矢島さんの独白(これは録音である)に合わせて文字がタイプで打つように現れる。これが導入となって”Incest Taboo”が始まる。
演奏が始まってからの映像は、言葉で説明するのは難しいが、流れる血のイメージに何度もリンゴの画像が重ねられ、歌に合わせて歌詞が現れてゆく。この曲が収録されているアルバム”BLOODT HIRSTY”は全体として「血」をテーマとしているが、物質としての血液だけでなく血縁、血統といったものも含んでいることには矢島さん自身がリリースイベントやLIVEのMCで触れている 。”Incest Taboo”というタイトルそのまま、この曲は血縁のタブーがテーマである。「禁断の果実」にはイチジク説やブドウ説もあるが、やはりここはリンゴがわかりやすい。

この曲の歌詞はずっと気になっていた。いわゆるプラトニックラブのような心情的な愛にとどまらない肉体的なものが歌われているのは明らかで、特に女性が歌うにしては思い切ったものでもあり、「 BLOOD=血」というテーマからそっちに行ったかという驚きも あった。禁断の果実は「食べる」「かじる」と表現されることが多 いように思うが「毒の果実 舐めていたい」という歌詞はそれ以上に官能的でもあり、「舐めていたい」が時間的継続性を感じさせるがゆえに「許されないことを承知で、耽溺する」さまを表現している。禁断の関係に、開き直り自らの意志で沈んでゆく、溺れてゆく、「神様にさえ邪魔させない」 そのような歌詞を映像であらわした点に、作詞者(あるいはアルバム製作者)としてこの曲を極めて重視していることが現れている。

「手垢つけて 強く抱いて」という部分は初めから気になっていた。それほど強く抱くという表現だとすれば意味上からは「手形」のほうが適切だろうが、そのまま差し替えるわけには絶対にいかない。穢れ・ 汚れを表現するためかとも思ったが、「手垢がつく」には使い古されるとか陳腐化するという意味もあり、素直に入ってこない。いろいろ考えているうちに「指」「掌」でつかむようにするさまが浮かび上がってきた。抱く、抱きしめるという場合、その行為の中心となるのは「腕」である。手垢がつくように抱くとすれば、腕ではなく指と掌でつかむことになる。手形がつくほどつかむのも指と掌であるが、これではつかむ強さしかあらわれてこない。ただじっと抱きしめるのではなく、お互いの身体中を指と掌でつかみあうようにする、より官能的で激しい抱擁が浮かんでくるのである。
このように考えれば敢えて「手垢」という語を使った意味が理解できるようにも思うが、それでも「手垢=陳腐化」のイメージは払拭しきれず、かといって別の単語で差し替えることもできそうにないので、ここを変えようと思えば引きずられるようにフレーズ全体の改変を余儀なくされそうである。

「この想いを早く浄化してほしい」の「浄化」 はカタルシスの訳語として引いてこられたのだろうか。 作中でのこの関係には何の救いもないように思われるので、悲劇のもたらす浄化作用としてのカタルシスが聴き手の側にもたらされることはあるだろう。しかし、先述の通り開き直り自ら耽溺していく関係であるとすれば、語り手の側にカタルシスは出てこない。一方、「 アダムとイブなら許されるのに何故?」と叫んでいるので、禁断の関係ではあってもいつかはそれが許されることを願っている、その願いが「浄化」と表現されているのだろうか。 私の感覚では漢語は意味が強くあらわされてしまうので、比較的広がりのある和語を使うことで読み手に多様なイメージを持たせることもひとつの方法かと思う。言葉の響きを重視して語を選択するのも一案である。この方法をとる前提で使用可能な語はいくつかあるだろうが、思いついたのはa音の連なりを生かした「早くhayaku 殺めてayameteほしい」である。もちろん書き手の意図や作品全体に与える影響を全く考慮していないので、これが良いというのではなく単なる例に過ぎない。

“Incest Taboo”の歌詞についてはずっと考えていたのだが、当日見た映像の印象が強かったので、思い切ってここで書くことにした。そのうち、他の曲の歌詞についても考えてみたい。

LIVEはいつも通りドライブ感のあるもので、対バンのあるときは30分からせいぜい45分、それがワンマンということで90分前後あったにも関わらず、え、もう終わり?と思うほど。「あっという間の」というまさに手垢の付いた表現があるが、本当にあっという間の90分であった。そういえばMCで「死んでもいいけど、けがと喧嘩はしないように」と繰り返していた(FACEBOOKのスタッフ投稿にもあった)が、どこかの会場で喧嘩沙汰があったのだろうか。

今回は歌詞の話が長くなったので、LIVEの中身については別途。しかし早くしないと忘れてしまいそうである。

終了後、物販の前でしばらく待っていると、矢島さんが現れた。ハイテンポの曲を90分間歌いっぱなしだった人に、このうえファンサービスまでしてもらうのも申し訳ないような気もするが、2SHOTをお願いして握手。何か気の利いたことを言おうといつも思うのだが、その場になると「6月3日のLUIDOも行きますから、がんばってください」というだけに終わった。よく見かける人たちはまるで友達のように話しかけているが、ああいうふうにはできそうもない。これは性格の問題である。

外に出ると、雨は上がっていた。

【セットリスト】
01.Black swan theory
02.Vampire Maiden
03.造り笑顔と嘘偽りのカモフラージュ
04.覚醒JINX
05.鼓動
06.Carmilla
07.モノクロ
08.Incest Taboo
09.Masquerade
10.理想郷-ユートピア-
11.SHOUT
12.Biohazard
13.必要悪サバト
14.BLOOD RESOLUTION
-アンコール-
15.理想郷-ユートピア-
16.Masquerade